独占業務
独占業務とは、他人の依頼を受け、報酬を得てする以下の書類作成である(行政書士法1条の2)。
官公署に提出する書類(電子記録を含む)
権利義務に関する書類
事実証明に関する書面
実地調査に基づく図面類
ここで、 「官公署」とは、国または地方公共団体の諸機関の事務所を意味し、形式上は行政機関のみならず広く立法機関および司法機関のすべてを含むが[1]、他の法律(弁護士法、弁理士法、司法書士法、税理士法、社会保険労務士法等)において制限されている諸官庁への書類作成については行政書士は業務となし得ない。官公署には、公益法人、特殊法人、保険会社等を含まず(衆議院法制局見解)、住宅金融公庫も同様に含まれない(昭和52年7月12日自治省行政課長回答)。ただし、これらに提出する書類であっても、権利義務に関する書類として独占業務の対象となり得るので注意を要する。
警察署に提出する告訴状・告発状、検察審査会に提出する不起訴処分に対する審査申立書は行政書士の業務範囲とする先例(昭和 53年2月3日自治省行政課決)がある一方、検察審査会に提出する書類(審査申立書、取下書、証人申出書等)の作成業務は司法書士法2条(現3条)の業務に準ずる(昭和36年10月14日民事甲第2600号回答・民月16巻11号157頁)とする先例もあり、検察審査会に提出する書類については司法書士との競業状態といえる。
法務局に提出する書類は、司法書士の業務であるが(司法書士法3条1項2号)、国籍帰化の許可申請については申請先(名あて人)が法務大臣であり、法務局は経由窓口にすぎないため、行政書士の本来業務として作成することができる。
紛争性のある法律事務であっても、依頼者の示した文面をそのまま法令上の様式・書式に適合させ書面を作成する場合や、依頼者の口述どおりに書面を作成する場合であれば、行政書士の業務とすることができる。
行政不服審査法による審査請求については代理人の要件に弁護士・行政書士など資格制限はない。ただし、弁護士法72条の制約を受け得る(日行連先例)ため、行政書士が審査請求書類の作成を業(独占業務)として扱う場合には、依頼人の口授に基づいて作成を行うようにし、依頼の趣旨を逸脱しないよう特に留意する必要がある(日行連先例/事件性のある法律事務に関して)。
行政書士法1条の2で、行政書士の独占業務とされているのは書類の作成である。行政書士または行政書士法人でない者が業として報酬を得て、これらの書類の作成を行うと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の適用がある。「業として(書類作成を行う)」の意味は、反復継続の意思で書類を作成することである。よって、反復継続の意思のある書類作成行為は、たとえ1度でも行政書士法違反となる。